もっと野菜!(下) 職場でお得に、健康に サラダなど「福利厚生」で購入補助

2022年10月3日 07時15分

サラダやフルーツが安く買える「オフィスで野菜」の冷蔵庫=愛知県清須市の明電舎名古屋事業所で

 働く人の健康づくりに役立ててもらおうと、福利厚生として、野菜の購入を支援する企業が増えてきた。従業員の健康管理を経営戦略の一環とする「健康経営」への注目が高まる中、「野菜不足の解消」が働きがいにもつながると期待されている。 (熊崎未奈)
 愛知県清須市の電気機器メーカー「明電舎」名古屋事業所。休憩や打ち合わせ用のスペースの一角に、小ぶりな冷蔵庫が置かれている。中にはサラダや野菜ジュース、カットフルーツ計約二十品が並ぶ。
 オフィスに野菜や総菜を提供するサービス「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」。会社が配送料などの月額利用料と商品の半額分を負担し、従業員は一品につき百〜二百円ほどで購入できる。
 約四百五十人が働く事業所内には食堂や売店がない。カップ麺の自動販売機を置く選択肢もあったが、従業員の健康づくりに配慮し、昨年四月に「オフィスで野菜」を導入した。商品は週二回補充されるが、その日のうちに売り切れるほど人気だという。
 利用者の中には、健康診断の結果が悪くて保健師の指導を受けていたが、コンビニでおやつを買う代わりに会社で野菜や、魚のすり身などを使ったサラダフィッシュを買うようになってから体重が減り、健康状態が改善した人もいたという。夜食や朝食用にフルーツを買う一人暮らしの若い社員も。担当する総務勤労課長の浅倉智久さん(45)は「食事は毎日のことだから福利厚生としても重要。野菜が社員の健康につながれば」と話す。
 「オフィスで野菜」の運営会社「KOMPEITO」(東京)によると、全国で累計四千五百拠点が導入。この一年で二倍に増えた。健康経営への意識の高まりに加え、コロナ禍で在宅勤務が増えて社内の食堂を縮小したり、周囲の飲食店の休業が相次いだりしたことが影響したようだ。
 野菜や栄養について学んだ上で、安く購入できるサービスもある。「ヴァカボ」(同)が展開するのは、管理栄養士らによるセミナー付きの野菜販売「食育マルシェ」。現在、月に十〜十五社で開催されている。
 九月上旬、テレビ会議システムを使って開かれたオンラインの食育マルシェに、「SOMPOひまわり生命保険」(同)の社員約二十人が参加した。
 この日の題材はマッシュルーム。講師がクイズを出しながら、「保存するときは紙に包んで冷蔵に」「かさの裏が黒いものが成熟している証し」といった知識を紹介した。セミナーはランチタイムの三十分間。終了後、マッシュルームなど五種類の野菜セット(三千五百円相当)を五百円で買える電子クーポンが配布され、参加者は専用ページから購入を申し込める。
 同社では昨年十一月から毎月一回、開いている。きっかけは、社員へのアンケートや健診の結果から「食生活の乱れ」が課題として浮かんだこと。オンラインのため、本社以外で勤務する社員も含め毎回二十〜三十人が参加している。
 ヴァカボ取締役の藤田久美子さん(41)は「野菜のおいしい食べ方を知り、安く買えれば社員の家族も喜ぶ。社員の満足度が高まって、生き生き働いてもらえたら会社にとってもハッピーなこと。クイズで楽しく学びつつ、野菜を味わってもらえたら」と話す。

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